山村で続く暮らしの文化バタバタ茶
山村の蛭谷(びるだん)集落で続く暮らしの文化バタバタ茶。
バタバタ茶は、真夏の一番暑い時期に約一ヶ月かけて発酵させて作られます。紅茶や烏龍茶の様に茶葉の酵素の力ではなくて、自然界の菌の力により発酵させて作られる珍しいお茶で、後発酵茶の黒茶に分類されています。
バタバタ茶の製造工程
①7月下旬。ふるさと美術館前のバタバタ茶畑から、ヤブキタ種と富春(ふうしゅん)の茶葉を刈り取る。
②蛭谷のバタバタ茶伝承館の工房へ運び、茶葉をチッパーで荒く刻む。
③茶葉を蒸して酸化酵素の働きを止める。(不発酵茶の緑茶と一緒)
④粗熱を取り太い枝を取り除く。
⑤茶葉を室(ムロ)に入れる。
⑥茶葉を60℃に保つように2~3日に一回切り返しを行いながら約40日かけて発酵させる。
⑦9月上旬。天日に干して乾燥させ発酵を止める。
20名ほどのたくさんの手で、炎天下の茶畑と蒸し暑い工房の中での作業。約1,000kgの茶葉から出来るバタバタ茶葉は1/5の200㎏!本当に貴重ですね。こうして、手間暇かけて作られる様子を知ると、バタバタ茶がよりおいしくありがたく感じられます。
バタバタ茶の歴史
バタバタ茶の歴史は古く、室町時代に「真宗本願寺第八世蓮如上人が文明4年(1472年)新川郡清水に堂宇を構え説法す」の記録があり、びるだんで既に飲まれていた黒茶を、説法に伴う供茶・酒飯茶に利用したと考えられています。
昔は「茶のみにござい」とお茶会をふれまわる言葉が交わされ、バタバタ茶の香りが村中に漂っていました。今でも、家族の月命日や、結婚、出産などのお祝いなど様々な集いの際に茶会を開催し、人と人をつなぎ親睦を深める場として大切に受け継がれています。
バタバタ茶葉は、1977年までは福井県若狭町で、1991年までは富山県小杉町で作られていました。
バタバタ茶の文化を伝承して行こうと、30年前に朝日町商工会が村おこし事業として朝日町でバタバタ茶の製造に取り組み始め、試行錯誤しながら技術を受け継いでおられます。
ふるさと美術館前のバタバタ茶畑では、これまでのヤブキタ種より寒さに強い「富春(ふうしゅん)」が、2016年に茶畑の半分ほどの面積で植え替えられ生育中で、2020年から刈取りと新たに製造が行われています。
秋には、ツバキ科の通り、2~3cmの小さくて真っ白な花を咲かせて、牡丹雪が降ったように見えます。
バタバタ茶の仲間
バタバタ茶は、緑茶と同じ不発酵茶で、葉っぱの酵素の力ではなく自然界の菌の力で発酵させるため「後発酵茶」と呼ばれます。後発酵茶の仲間には、中国のプーアール茶、土佐の碁石茶、阿波番茶があります。
また、お茶を茶筅で泡立てて飲む「振り茶」の仲間として、島根の「ぼてぼて茶」沖縄の「ぶくぶく茶」があり、どの名前も似ているのがおもしろいですね。
バタバタ茶の名前は、茶筅を振る動作があせぐらしい(あわただしい)ことから、バタバタ茶と名付けられました。
バタバタ茶の体験施設
朝日町では、バタバタ茶を無料で体験できる施設が2ヶ所あります。
ご近所のびるだんのおじいちゃんおばあちゃんが常に10名ほど集まっており、当番の方がふるまうお茶請けの山菜、お煮〆、煮豆、漬物などをいただきながら、バタバタ茶会の雰囲気を体験出来ます。
バタバタ茶をのみながらおしゃべりしてたくさん笑って。びるだんのみなさんの元気の秘訣が分かります。
県下最古の江戸時代の町家「川上家」を歴史公園内に移築し、囲炉裏端で鉄瓶で煮だした「バタバタ茶」を味わえます。懐かしの豆炭のあたたかな火を見つめているだけで癒されます。
バタバタ茶葉と道具の販売店
バタバタ茶葉は、朝日町内では、まめなけ市場、らくち~の、富山市では、とやマルシェ、ととやま、D&DEPARTMENT TOYAMA、東京の日本橋とやま館、いきいき富山館などで販売中です。
五郎八茶碗は、赤川焼、笹川焼と朝日町のふたつの窯元で作られ販売されています。
バタバタ茶筅は、ただ今、職人さんを育成中で、在庫切れの状態です。
ご家庭では、お茶・出汁パックにバタバタ茶葉を詰めて、ヤカンや鍋にお湯を沸かして入れて、30分以上煮だしてからお飲みください。
お茶が少なくなったらお湯を継ぎ足して、一日中飲んでいられるお茶です。
泡立てずそのまま散茶としていただけますが、五郎八茶碗に茶を入れ、茶筅でカタカタ泡立てていただくと、口当たりがまろやかになり適温でおいしくいただけます。
【バタバタ茶のお問合せ先】
朝日町商工会 内
(株)あさひ(担当:川口さん)
TEL 0765-83-2280